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八島ヶ原湿原の花々(2023.5.19)

2023.05.21

先日八島ヶ原湿原を歩いてきました。広場では中学生が昼食をとっていて遠足でしょうか、とても賑やかでした。

その広場の傍らにキジムシロを見つけました。

円状に広がる黄色い花
〈キジムシロ〉

霧ヶ峰では5月頃から咲く花ですが、名前の通りキジが腰を掛けるのにちょうど良さそうな、お洒落な座布団のように見える植物です。
花をじっくり見ていると、ハムシやアブがせわしなく動き回っていました。

花にとまるアブ
<吸蜜中>

こちらも賑やかにお食事中ですね。

八島ヶ池、鬼ヶ泉水、鎌ヶ池ではシュレーゲルアオガエルの鳴き声が響き渡っていて、池のほとりには、小さな小さな植物が開花しています。

池と浮島
<八島ヶ池>
白い花
<ミズゴケ上に生えるタテヤマリンドウ、手前は蕾>

木道上から見ると小さな白い点にしか見えませんが、双眼鏡や望遠レンズで覗くと小さな白いリンドウが目に飛び込んできます。
タテヤマリンドウです。
ハルリンドウの変種とされ、亜高山・高山地帯の湿地に生える高さ5センチ程のリンドウです。花の色は淡い青~白ですが、霧ヶ峰で見られるものは白が多いです。

旧御射山(もとみさやま)神社まで来ると、「⁉」不思議な様子に目を奪われました。

左側が緑、右側が白い木
<右側だけ白いアオナシの木。「やまなしじいさん」の名前で親しまれています>

アオナシの木が半分だけ満開だったからです。日当たりの関係でしょうか…。
社の周りの足元にはニリンソウ。白い花を縁取るようにほんのり淡いピンク色をしています。

ニリンソウ
<葉はトリカブトに似ています>
ほんのりピンクのニリンソウ
<ほんのりピンク色のニリンソウ>

ニリンソウは、北海道~九州にかけて生息する植物ですが、北海道を舞台にした漫画、ゴールデンカムイの中にも登場しますね。
アイヌの伝統料理オハウ(鍋料理)に入れるシーンが美味しそうで、どんな味かと気になります…。

これからゼンマイやコゴミ、タラの芽など美味しい山菜が出てくる季節ですが、霧ヶ峰では採取することはできません。
ですが、本来自然とは人々にとって必要不可欠なものです。
衣食住あらゆるものは、自然を利用しているからです。

いきいきとした植物やそれに集まる生きものを見ていると、生きる力が感じられます。

地面から顔を出すシダ植物
青空に映える若葉

霧ヶ峰火災のその後(2023.5.21追記)

2023.05.07

ニュースでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、5月4日13時半過ぎに霧ヶ峰で大規模な火災が発生しました。

火災は、霧ヶ峰の南に位置するカボッチョと呼ばれる山でおきました(一般的な地図ではガボッチョと記されていますが、センターでは以前から使用されているカボッチョと表記します)。

黒く焼けた山
〈センター近くから見たカボッチョ〉

ゴールデンウィーク中盤、多くの人で賑わう中でのことです。山肌をゆらゆらと移動する炎と、上空まで立ち昇る大きな煙に驚いた方も多かったかと思います。

山肌を覆う炎
<カボッチョ北側を走る炎>

夕方には富士見台まで延焼。
車山山頂直下の広い範囲(現時点で約180ヘクタールと推定)が焼けましたが、多くの方々の消火活動により翌5日朝に鎮圧し、昼過ぎに鎮火しました。
出火原因は現段階で不明です。

翌日、センターでは火災や交通状況をインターネットや来訪者に伝えたり取材を受けたりと、対応に追われた一日でしたが、ケガ人や建物への大きな被害が無くひとまず安堵しました。

火災後の状況です。
車山肩の山小屋や建物はいつもどおりの姿で、車山肩からは焼けた様子はあまり見えません。

茶色の草原
<車山肩>

登山道を歩き、最初の大きなカーブに差し掛かると、目の間に黒い焼け野原が…。

黒く焼けた地表
<車山肩から車山山頂へ向かう最初のカーブから見たカボッチョ方面>
焼けたササ
<煤けたササ>

煤けたササが積もり、登山道の近くまで黒くなっていたので唖然としました。

車山山頂まで登ると、気象レーダードームと2020年に新設されたスカイテラスにも影響が無いことを確認。火の手はテラスの15m程まで迫っていました。

山頂の建物
<気象レーダードーム>
テラス
<展望テラス>

自然環境への影響について、移動できる哺乳動物や鳥は火から逃れられたかと思いますが、営巣中のヒナや昆虫には影響があるでしょう。
植物では低木のレンゲツツジが焼けてしまったものもありましたが、蕾がしっかり残っているものもありました。

黒い大地から枝を伸ばすレンゲツツジ
<蕾の付いたレンゲツツジ。例年見頃は6月。>

草本は芽吹きが始まった頃です。
霧ヶ峰を代表するニッコウキスゲは現時点で、芽吹いているものは多くなく、また群生地の車山肩は
火が入っていません。ニッコウキスゲに関して、現段階では火災による影響は大きくはなさそうです。

枯草の中に出ている葉
<ニッコウキスゲの芽>
新芽が出ている場所は少ない
<この時期は全体的に芽は少なめ>

広い草原景観が特徴の霧ヶ峰は、もともと火入れ(野焼き)をすることで出来上がった自然環境です。
現時点で詳細な影響は分かりませんが、霧ヶ峰の自然が無くなるわけではありません。

こちらは、2013年4月の野焼きが延焼した際の様子です。

黒い範囲が大きい草原
<踊場湿原北側斜面5月1日撮影>
緑の範囲が多い草原
<5月31日撮影>

火入れ後に新芽が芽吹き、一か月ほどで青々とした草原が現われました。
植物たちが一斉に成長する、自然の大きな力強さが感じられないでしょうか。

今後、風評被害が心配されますが、霧ヶ峰の自然を実際に見て、その良さを多くの方に伝えてもらえると幸いです。

最後に、火が入ったことで山菜などの芽吹きが良くなるかもしれませんが、草原内に立ち入ったり採取したりはしないでください。立ち入ることで折角芽吹いた植物を踏みつけてしまうことになります。
また、出火場所となったカボッチョは遊歩道が整備されていない民有地のため、立ち入らないようお願いします。

(2023.5.21追記)
火災のおおよその範囲は以下の通りで、道路及び登山道に影響はありません。

火災の範囲(カボッチョ~富士見台~車山山頂直下)

小さな春

2023.05.01

街中では夏日になる日が出ていますが、霧ヶ峰でも最高気温が18℃程の日があり、初夏のころの気温で驚きです。
霧ヶ峰に来られた方の中には半袖半ズボンの方もいましたが、センター周辺は標高1700m近い山の上。風が冷たく感じられることが多いため、上着があると便利です。

先日、春の霧ヶ峰を味わおうと、霧ヶ峰自然保護センターから八島ヶ原湿原まで歩いてきました。

センター前の園地ではどこからともなく「ピョピョピョ…」と早口な鳥の鳴き声がします。

ヒバリの飛翔
〈空高く舞うヒバリ〉

空高く舞い上がる、ヒバリのさえずり飛翔はこの時期ならではの光景。
霧ヶ峰の広々とした空をバックにどこまでも飛んでいきそうです。

草原と大空
〈15m位上昇していました〉

歩いていると、地面から湧き立つほのかな熱気と共に乾いた土や草の香りが、ふと、してきました。
この香りを嗅ぐと、山に春が来たことを感じるのですが、
自然の中を歩いていると五感が研ぎ澄まされていろいろなものが感じられます。

林の中では、木々の間から差し込む日差しを受けて、小さな花々が開花していました。
センター近くの林ではタチツボスミレ、ゴマ石山~沢渡の林の中ではヒメイチゲ。

タチツボスミレ
<タチツボスミレ>
岩の陰で咲くヒメイチゲ
<ヒメイチゲ>

上の写真の中で、どこに咲いているか探してみてください。

ヒメイチゲと一円玉
<一円玉を置いてみました>

ヒメイチゲは蕾がほんのりピンクで、この姿も可憐です。

ヒメイチゲ蕾
<ヒメイチゲの蕾>

この日は他にこんな植物を見つけました。

キジムシロ
<キジムシロ>
サクラスミレ
<サクラスミレ>

地面から4~5センチ以内の高さで展開している小さな植物たち。
小さくても成長している植物たちの姿を見ると生命力を感じます。
是非、足元にも目を向けて歩いてみてください。

最後に、ゴールデンウィーク中は駐車場の混雑が予想されます。
車山肩や八島湿原駐車場に停められなかった場合は、霧ヶ峰自然保護センター付近の駐車場もご利用ください。

地図はこちらです。

ちなみに、今回歩いたコースでは帰りにバスを利用しました。
バスについては「お知らせ」のページに載せているので、バスをご利用の方はこちらをご覧ください。

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