霧ヶ峰の自然
地形・湿原・気象・歴史
1. 霧ヶ峰の地形
霧ヶ峰は、最高峰・車山(1,925メートル)を中心として標高1,500メートル以上、約3,000ヘクタールに広がり、緩やかな地形の大部分を草原が占めています。
霧ヶ峰は、八ヶ岳連峰とほぼ同時代(約100万年前)の火山活動によって形作られました。安山岩が点在するなだらかな稜線の美しさは、植物の豊かさとともに霧ヶ峰の魅力のひとつとなっています。
2. 霧ヶ峰の湿原
霧ヶ峰の高層湿原は、学術的にも貴重であり、八島ヶ原湿原、車山湿原、踊場湿原の3つの湿原を併せ、国の天然記念物に指定されています。
八島ヶ原湿原は泥炭層が発達していて、約8.1メートル、およそ1万年以上かかり現在のような湿原になったといわれています。また、泥炭層にふくまれる花粉などの分析によって古代から現代までの気候の移り変わりを推測することもできます。
3. 霧ヶ峰の気象
「鐘がものをいふ 霧だ霧だと 鐘がものをいふ 生きろ生きろと」― 平林たい子
かつての車山観測所の報告によれば、年間298日の霧が記録され、特に車山を中心として霧が深いという記録が残っています。霧は、特に朝晩によく発生します。
1月の最低気温の月平均は‐14.8℃、8月の最高気温の月平均は24.0℃で、冬は旭川より低く、夏は東京の5月か10月下旬の気温と同等、年間平均気温は2.5℃です(車山山頂の気温)。
霧ヶ峰の冬は長く、11月頃に雪が舞いだし、その後本格的な冬が始まります。積雪は2月がピークで1メートル程度となり、主に上雪(かみゆき)によるものです。その後、春先の日差しで雪解けは進んでいきますが、4月に雪が降ることも珍しくありません。
上雪とは南岸低気圧が通過した時に長野県中~南部に降る雪を表す方言です。
4. 霧ヶ峰の歴史
霧ヶ峰には、踊場湿原近くの「ジャコッパラ遺跡」、「池のくるみ遺跡」、旧御射山神社近くの「八島遺跡」、その他、「物見岩遺跡」や「雪不知遺跡」など、今から約3万年~1万年前の旧石器時代の遺跡が点在しています。 これらの遺跡群の発掘成果は、全国屈指の黒曜石産地としての性格や、そこに生活していた人々の様子などの解明に向け、考古学研究の発展に多くの材料を提供してきました。
また、中世になると、鎌倉武士の信仰をうけ、旧御射山神社周辺では、馬術や弓矢などの武術を競った神事が執り行われていました。 今でも神社前では、階段状になった当時の遺構を見ることができます。近世になり、さらに人との関わりが強くなり、主に採草地として計画的に利用され、秣(まぐさ)や田畑の肥料として使われました。
人とともに長い歴史を重ねてきた霧ヶ峰。現在、私たちが見ている草原景観は歴史の証でもあるのです。